SODの元執行役員が10年前の東スポインタビューを振り返ってコンテンツビジネスを大いに語る

シェアする

2007年にソフト・オン・デマンド株式会社を退職いたしましたナリシゲと申します。
現在はやくみつるのそっくりさんです。

さて、先日書いた「2007年、ソフト・オン・デマンドを退職しました。」というエントリが
思いのほか拡散したようですので、調子に乗って第二弾といきたいと思います。

題して「SODの元執行役員が10年前の東スポインタビューを振り返ってコンテンツビジネスを大いに語る」。
1475888_1403501939894966_1611832100_n
2005年5月17日発行の東京スポーツに掲載された「時代の仕掛け人インタビュー ズバリ答えてもらいます」を元に、当時を思い出しつつコンテンツビジネスについて語ってみたいと思います。

■目次
1.それは入社3年目のことでした
2.後発組が勝つための工夫①作品選び
3.後発組が勝つための工夫②価格
4.本当に苦労したのは…
5.当時考えた今後の展開は優秀ではなかろうか
6.コンテンツビジネスに必要なこと
7.せっかくなのである業界にアドバイス

スポンサーリンク

1.それは入社3年目のことでした

ソフト・オン・デマンド(以下SOD)が月額見放題サービス(今で言うサブスクリプションサービス)をスタートしたのは、
今から11年前の2004年、私がSODに入社して3年目のことでした。
当時は既にDMMがアダルト動画配信サービスを開始しており、そのDMMを追撃する、という無謀なミッションの下、月額見放題サービスの開発をスタートしました。

サービス開始の翌年(2005年5月)の東スポのインタビュー記事にはこのように書いてあります。

【Q2】開発のきっかけは?

「『SODはやらないのか?』というお客様からの声が大きかったですね。販売チャンネルを増やしたいというのもあったし、DVDを買うのは抵抗がある、という人でもわが社の作品に触れやすくしたかった」

実際、お客さんの声より大きかったのは社長やグループ会社からの声です。
「早くやれ!」「儲かるんだろ?」「打倒DMMと言え!」
当然、そういう声を無視することは出来ませんので、2004年に月額見放題サービスの開発をスタートしました。
当時はSOD自身もネット通販の売上が伸びており、また時代的にも「ネットの商売は儲かりそうだ」などと考える人が増えてきていましたが、まだまだ売上のメインはビデオショップでのDVDの販売です。
「DVDの売上を落とすことなく、ネット配信での売上を積み上げろ」という無茶な(しかしコンテンツホルダーとしてはある意味当然の)要求に応える必要がありました。

開発にあたり、システム面はプロジェクトリーダーを務める上司が担当、私はプロジェクトの進行管理と配信する作品のセレクトを担当しました。
入社して2年少々が経ち、毎日ネット通販の売上を見ているから作品のセレクトなんて簡単、と思っていたのですが、これがなかなか厳しかったのです。

1005014_1403501959894964_1159680681_n

2.後発組が勝つための工夫①作品選び

東スポインタビューにはこうあります。

【Q3】作品選びで重視しているのは?

「もちろん人気作に加え『全裸シリーズ』など他のメーカーでは出さないSODらしい作品は入れています」

後発組の我々が勝つために、まず考えたのが「コンテンツの充実」です。
お客さんから見れば、「少しでも安い金額で出来るだけ多くの作品を見ることができる」のがベストなサービスです。
幸い、コンテンツ(作品)は山ほどありますので量的な問題は(エンコードにかかる費用と時間を除けば)そんなにありませんでした。
ただ、コンテンツの質の面では少し問題がありました。
これは他の商材でも同じだと思うのですが、全ての商品が均等に売れるということはまずありえませんよね。
売れる商品はDVDで数万本売れるのですが、中には売上1000本を切るような作品もありまして。
DVDの売上順で配信作品を決めてしまうと、メーカーに偏りが出るんですよね。
あるメーカーはこのサイトで数百本の作品を配信しているのに、別のメーカーの作品は数十本しかない、という状況にはできませんので、作品選びは本当に苦労しました。
数百本の作品の内訳を、「人気作品」で且つ「メーカーを偏らせない」とするのは思いのほか難しいのです。

作品のセレクトにあたりもうひとつ問題になったのは「契約」の問題。
ご存知の方も多いと思いますが(そして今でも変わってないと思うのですが)、出演する女優さんによって、販売方法/露出可能な方法が異なるんです。
ある女優さんは、セル(販売)はOKだけどレンタルはNG。
ある女優さんは専門誌に載るのはOKだけどスポーツ新聞に載るのはNG、などです。
(これを誤ると、いわゆる「親バレ」に繋がり女優さんの人生に影響が出ますので、慎重にならなければなりません。)
2003年以前の作品を「ネットで配信する」という発想は作品制作当時にはありませんでしたので、契約書には項目すら存在しなかったのです。
ですので、配信可能なのはいわゆる「パブリシティ全開」と呼ばれる女優さんのみが出演している作品に限定されます。

このように、いろいろと作品のセレクトに制約がついてしまったのですが、そんなことは言い訳に出来ません。
「全裸シリーズ」などのいわゆる“SODらしい(と言われる)”「企画もの」、そしてグループメーカー各社の看板作品を中心にセレクトしました。
月額見放題サービス開始時の作品の具体的な本数は忘れてしまいましたが、他社と比べても決して少なくない量、そして決して劣ることのない質だったと思います。

実はここで、「メーカー別にチャンネル(サービス)を分ける」という案もあったのですが、「メーカー間に格差か出るのはまずい」との理由で誰か(失念)に却下されました。
メーカー別にチャンネルを分けてしまえば、各メーカーも自社のチャンネルを独自にPRできたでしょうし、売上もコンテンツの質により差がつくという、ある意味公平な状況だったと思うのですが、今となってはどちらが正解だか分かりません。

3.後発組が勝つための工夫②価格

後発組が勝つために、もうひとつ重要なのが「価格」です。

【Q1】主な特色は?

「まず値段。月額1480円というのは大手の同様のサービスでも最安値です。サービス開始が昨年の7月と、やや後発でもありましたし、インパクトをもたせる意味でも、安値にこだわりました。

これ、確か最初は1,980円だったと記憶してます。
それが、誰か(失念)の鶴の一声で1,480円になったのではなかったでしょうか。

確かにインパクトという意味では1ヶ月1,980円より1ヶ月1,480円のほうが上です。
他社に比べても半額程度だったかと思います。
しかしこの500円の差、会員数が1万人だったとしたら、売上が500万円/月の差となります。
1,980円/月×1万人と同じ売上を、1,480円/月 で出そうと思えば13,378人の会員が必要です。
今考えると、ここは1,980円、いやもう少し高くても良かったのではないでしょうか。
価格設定は難しいです。

4.本当に苦労したのは…

【Q4】苦労した点は?

「コストや開発の点より、社内でコンテンツ事業に詳しい人間がいなかったことですかね。『これでチャンネル間にてユーザーの移動が起こり、DVDの売上が下がらないか?』という心配があったようですが、見られなかったことが人が見られることのプラスの方が大きいと思いましたし、勝算はありました」

などと答えてます。
月額見放題サービスが始まることでDVDの売上が下がるのでは?という心配は杞憂に終わりましたが、そもそもDVDの売上が下がってはまずかったのだろうか、と今は思います。
DVDを購入して作品を見る層と、PCで作品を見る層は全く異なってましたから、DVDの売上など下がるはずはないですし、仮に下がったとしてもトータルの売上が上がれば問題ないはずです。
それに、配信している作品はDVDが発売されて一定の期間が経過しているものばかりで、その大半が費用回収などを終えているものです。
つまり、ここでの利益はある意味「ボーナス」的なものなのです。
ただ、そのように考えてしまうと、発売間もない作品の配信をメーカーさんが許可してくれません。
新作をまずセルDVDとして売る→数ヶ月後レンタルに回す→更に数ヶ月後にネットで配信、という流れになりますので、ネットユーザーは新しい作品を見ることが不可能となります。
そこで、費用回収の考え方をこれまでの「DVDの売上のみで回収」ではなく、「DVDの売上+ネット配信での売上+etcで回収」と変えてもらい、新しめの作品を配信できるようお願いしたのですが…当時は説得しきれませんでしたね。難しかった。苦労しました。のちに各社さんご理解いただきましたが(と記憶してます)。

5.当時考えた今後の展開は優秀ではなかろうか

【Q5】今後の展開は?

「DVDより先にBBでリリースしようという計画はあります。また、DVDとBBで前編、後編に分けるなどやり方はいろいろあると思います。あとは携帯電話への進出。今は無料でサンプル映像を見られるサービスをしていますが、将来は優良にして本編を流したい。携帯だと作品に触れてもらう機会も増えるし、女性でも見られますからね」

月額見放題サービスをBB(=ブロードバンド)と呼んでます。時代を感じさせますね。

それはともかく、2005年の時点で「DVDとネット配信の連動」「携帯電話での動画配信」「女性」に触れているわけです。我ながら、悪くないと思います。実現は出来ませんでしたが。

また、この記事で「無料でサンプル映像を見られるサービス」とありますが、これは“会員登録無しで”という文言が抜けてますね。たかがAVのサンプル映像を見せるのにメールアドレスやクレジットカード番号を入力させる必要などないんですよ。そんなことをしてもユーザーは離れていくだけです。
確かSODのサイトも一時期はサンプル映像視聴に会員登録が必要な仕組みになっていたと思いますが今はまた会員登録が不要になってますよね。そういうことなんです。

6.コンテンツビジネスに必要なこと

2004年のサービス開始以来、この月額見放題サービスは緩やかではありますが会員数を着実に増やしていました。
ポイントは以下の3つです。

  1. 作品数を定期的に増やしていたこと
  2. 作品の見せ方を工夫していたこと
  3. 担当者が真面目に運用していたこと

当たり前のことを当たり前にやっただけなんです。
作品数は「テーマ」を持たせ、毎週5作品~10作品追加していました。
例えば「寂しいときに見たいAV特集」とか「彼女と一緒に見たいAV特集」とか、そういう感じで、各作品にもコメントを入れていました。
ユーザー全員がAVに詳しいわけではありません。
詳しくないと検索も出来ませんから、こちらからアプローチするのです。
これにより、検索では決して見つからない作品との「出会い」が生まれます。

この作品の「出会い」には、かつて私がアルバイトをしていたCDショップでの経験が生きています。
私の仕事はもっぱら店内の案内(という名の万引き防止)とコメントカード書き。
知ってる曲も、知らない曲も、毎日聴いてひたすらコメントカードを書き続けました。
やはり、コメントカードを付けたCDはお客さんが手に取ることが多いんですよね。
本来は別のCDを探しに来ていたお客さんが、コメントカードを見てCDを手に取るなんて、面白いじゃないですか。

コンテンツビジネスにおいては、作品との「出会い」をどれだけ演出できるかが重要だと思っています。
ただ単にコンテンツを並べただけのサービスは、よほど大手が運営する大規模なものでなければ、誰も見向きもしません。

7.せっかくなのである業界にアドバイス

ここまで書いて、ある業界に向けて少しアドバイスしてあげたくなりました。
それは「電子書籍」の業界です。
電子書籍の書店はかなりたくさんあるようなのですが、正直言って一部を除いてはサービスの特徴が出ておらずあまり魅力を感じません。
それもそのはず、配信されている作品はどのサイトも大差なく、勿論価格も同じです。
「無料試し読み」のキャンペーンも、大半が出版社の主導で行われますので、どの書店でも内容が同じです。
違いがあるとすれば、書店独自のポイントが付くとか、そのくらいでしょうか。

電子書籍の書店のサイトを眺めてもつまらないです。
人気コミックのキャラクターが入ったバナーが並んでいて、その下に作品がずらりと並んでいるだけのページばかりです。
買う作品が決まっている人はいいですが、「ちょっと電子書籍の漫画を買ってみようかな」という人は、サイトに訪問後のアクションが難しいです。
その程度のモチベーションのユーザーは、どんな作品が販売されているかも分からないでしょうし、検索することすら難しいのではないでしょうか。

私なら、毎週テーマを決めて、そのテーマに沿った作品を出版社もジャンルも横断して10作品程度ずつ簡単な書評入りで紹介するページを作ります。
リアル書店に行くと、入り口近くに平台があって、そこに新作や人気作を積んでますよね?
あれを旧作でやるイメージです。
リアル書店で、知らなかった本と出会える体験を、電子書籍の書店でも行おう、ということです。

毎週テーマを決めて作品を選ぶのが困難?書評をそんなに用意できない?
お気持ちは分かりますが、それでは他の書店に負けてしまいますよね。
作品との「出会い」を演出して競合サイトに差をつけましょう。

ちなみに私がいつも電子書籍を買っているのは、このhontoです。



操作性が良いのでお気に入りです。

ホームページ 企画・立案/制作/運営相談 エイビス

東京・福岡・北九州の中小企業様・個人事業主様向けにホームページ運営相談と制作・リニューアルを行っています。

【ご提供サービス】

その他、仕事に関するお問い合わせはこちらからお願いします。

スポンサーリンク

シェアする

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitterでナリシゲをフォローしよう!